薬事法という言葉を聞いたことはあっても、実際にどのような法律なのかを、しっかり把握している人は少ないかもしれません。
実は現在、薬事法という名称の法律は存在しません。
薬事法は1960年にできた法律ですが、改正されて、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という名称になっています。
薬機法と呼ばれることもありますが、ここでは薬事法という略称を使用します。
まず薬事法の内容ですが、この法律では医薬品や医薬部外品、そして化粧品などについて必要な規制が設定されています。
この規制によって、安全性の高い医薬品を手にすることができます。
そこで医薬品の定義ですが、法律上は医薬品とは、日本薬局方に収められているものを指します。
さらに医薬品は、人もしくは動物の病気の治療に使用されます。
予防目的に使用される場合も医薬品と見なされます。
そして医薬部外品ですが、これは人体に対して穏やかに作用するものと定義されています。
具体的には口臭や体臭の防止、あせもなどの皮膚疾患の緩和、脱毛の防止や育毛などが医薬部外品です。
また化粧品は、身体を清潔に保ち、魅力を増したり容貌を変えたりするために使用されるものと定義されています。
具体的には、皮膚や毛髪を美しく保つものなどがこれに相当します。
このように定義された医薬品、医薬部外品、そして化粧品ですが、これらは広告規制を受けています。
まず66条により、誇大広告に関する規定があります。
この項目では、医薬品や医薬部外品、そして化粧品について、虚偽の記述をしたり過大な広告を行うことを禁じています。
これは医療機器や再生医療等製品についても同じです。
例えば製造方法や効果に対して、偽りの記事を書くと違法になります。
この場合、暗示的な表現も禁止されています。
また偽りの記事を流布することも禁止事項です。
ではどのような表現なら認められるのでしょうか。
例えば化粧品であれば、頭皮を清浄にする、頭皮の不快な臭いを抑える、といった表現は認められます。
また毛髪を健やかにする、うるおいを与える、なども違法ではありません。
しかし効果や安全性を保証した表現は違法となります。
例えば、その化粧品を使用したことによって一定の効果が保証されるような表現は禁止されています。
効果の確実性を示す表現も用いてはならないと、定められています。
実際の購入者が感想を表現するレビューに関しても、効能や効果の確実性を記述してはなりません。
どれだけ使っても安全など、用量に関する過大な記述も禁止です。
さらに世界一の薬、絶対安心などの大げさな表現や、速効性についての極端な表現も禁止されています。
その他、他社の商品について誹謗中傷した記述も違法です。
また商品にホワイトニング効果という言葉を掲載した場合、このままでは法に触れますが、別の欄に注意書きとして、「ただしメラニン色素の生成を抑え、シミを防ぐ」のように併記すれば認められます。
また、傷んだ髪を再生するという表現は効果の確実性を表現しているため認められませんが、傷んだ髪を補修すると表現するなら法に触れません。
エイジングケア効果という言葉については、問題ありません。
ただし若返り、老化防止という表現は、化粧品に関して使ってはいけません。
さらに、美しい素肌になりますと確実性を表現した場合は認められませんが、潤いを与えてしわを目立たなくする、潤いのある肌へ導くという表現であれば、使用してもかまいません。
薬事法に違反した場合ですが、罰則と罰金が定められています。
最大で5年以下の懲役もしくは500円以下の罰金が生じるケースもあり、悪意の有無には関係ないため、注意が必要です。
薬事法の規制と効果や効能との関連性
薬事法は医薬品や医薬部外品、化粧品などの販売や取り扱い、宣伝広告などについて規制を行うための法律だと考えている人もいるかもしれません。
確かに結果的にそのような形で運用されてしまっている面もありますが、基本的には目的は規制ではないというのが正しいでしょう。
医薬品や医薬部外品などの品質、有効性及び安全性の確保や保健衛生の向上、さらには研究開発の促進をも目的としているのが原則だからです。
しかし、結果的にそれを確保するために規制を設ける必要が生じ、様々な形で摘発も行われてきています。
薬事法で重きを置いているのは病気に対する効果についての意味合いを明確にすることです。
医薬品については人や動物の疾病の診断、治療、予防のいずれかを目的とするか、身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的としています。
特に医薬品として医療現場で利用されているものは病気の予防や治療を目的としているものが多く、治験によってその有効性や安全性が明確に示されているのが特徴です。
医薬部外品や化粧品については病気の予防や治療に対して効果があると示されているわけではなく、ある症状に対して緩和な作用を及ぼすことができるという程度の効果や効能しか示されていません。
この違いによって区分が行われているのが薬事法の特色と言えるでしょう。
それに伴って販売や取り扱いについても医薬品の方がより慎重にならなければならず、厳しい管理体制や販売規制を行わなければならなくなっています。
一方、よく薬事法が話題になるのは宣伝広告に関するものです。
基本的に薬事法で定められている医薬品、医薬品部外品、化粧品、医療機器については人や動物の身体に対して効果や効能が認められています。
そのような性質のあるものは規制対象になりますが、それ以外のものについても特に宣伝広告については規制対象となるので話題に上りやすくなっていると言えるでしょう。
効果や効能があると示されていないものについては、現状では法律上で効果や効能がある医薬品などよりもさらに厳しい表記上の規制を受けることになるのです。
たとえある食品を食べたら病気が治ったという口コミがあったとしても、それを利用して宣伝広告をすると書き方によっては罰則を受けることになります。
その病気が治るという表記は医薬品でなければ許されないものだからです。
医薬品であったとしても誇大な書き方になっていると規制を受けるほどに厳密に管理されているのが広告内容であり、食品レベルの場合には病気の名前に触れる程度でも問題になるのが実情です。
血圧が気になる方に、血糖値が気になる人にといった形でしか記載されていない特定保健用食品などが多いのはこの規制にかからないようにするために他なりません。
ただし、広告というものも定義されているので注意が必要でしょう。
三つの要件がまとめられていて、顧客を誘引する意図が明確であること、商品名が明らかにされていること、一般人が認知できる状態であることが求められています。
つまり、ある成分を含んでいる食品を食べて病気が治ったと個人のブログを書いたとしても問題はありません。
しかし、それをアフィリエイトにして購買を促す記事にしてしまうと法律に抵触することになります。
化粧品などを実際に使ってみてアフィリエイトをするというときにも既に示されている効果や効能の範囲で誇大な宣伝をせずに記述すれば問題はありませんが、それとは別の効果に着目して効果があると宣伝してしまうと問題になってしまうでしょう。
個人が行っていても問題は生じ得るので、アフィリエイトなどを行う人も増えている現代では誰もが注意しなければならない法律になっています。